予防接種に関して考えていく時に、なかなか判断となる基準がないとのお話が数多く聞かれますので、現在の感染症の流行状況とワクチンの効果、副反応について改めてまとめて見たいと思います。参考にした資料は「国民衛生の動向」「予防接種の手びき」「最新予防接種の知識」「予防接種と子どもの健康」です。
風 疹 ワ ク チ ン
◆風しん
風しんウイルスの飛沫感染によっておこる病気です。潜伏期間は2〜3週間です。軽いカゼ症状ではじまり、発しん、発熱、後頚部リンパ節腫脹などが主症状です。そのほか眼球結膜の充血もみられます。発しんも熱も約3日間でな血小板減少性紫斑病、脳炎などが報告されています。血小板減少性紫斑病は患者3,000人に1人、脳炎は患者6,000人に1人くらいです。年長児や大人になってからかかると一般に重症になりやすく、3日ではなおらないことが多いのです。
一番恐ろしいのは妊婦が、妊娠早期にかかりますと、先天性風しん症候群と呼ばれる異常児(心奇形、白内障、聴力障害など)が生まれる可能性が高くなることです(1か月で50%以上,2か月35%,3か月18%,4か月8%程度)。したがって妊娠前に予防接種を受けておくことが大切です。
●潜伏期間
ウイルスが体に感染した後は、体内で少しずつ増殖し、ある日突然、症状を出します。感染してから症状が出るまでの期間をいいます。
◆風しん(三日ばしか)ワクチン(弱毒生ワクチン)の効果
現在のところ、風しんワクチンにおける抗体獲得率は95%以上と考えられます。なお免疫ができても10年以上たつと次第に免疫が弱くなって風疹にかかる人も数%はあります.そのため将来は2回接種になる可能性があります.(米国などでは2回接種です)まれに、風しんにたいする免疫力の低下を認めることがありますので、妊娠年齢に達した女性については妊娠する以前に抗体検査を行うことが勧められています。感染症サーベイランスの結果では、1987年から1993年までの風しん報告数のうちワクチン接種歴ありとされたの人の割合は、0.05〜0.29%でした。
2〜3歳になると、かかる人が急に増えますので、できるだけ早く受けるようにしましょう。男の子も女の子も受けることになります。保育園や幼稚園に行く人は麻しん(はしか)に続いて入園の前にすませましょう。お母さんが次の子供を妊娠中であっても、お子さんは受けられます。
【副反応】
風しんワクチンも弱毒生ワクチンですから、麻しん(はしか)と同じようにウイルスが体内で増えます。軽い発熱、発しん、リンパ節腫脹などがみられますが、接種を受けた者100人中4人以下です。成人女性は一過性の関節痛が接種を受けた者100人中6人程度にみられます。いずれも,一時的なもので自然に治ります.ワクチン接種後1〜2週間に接種者の咽頭からワクチンウイルスの排泄が認められることがありますが、まわりの人にはうつらないとされています。また、ワクチン添加物にたいするアレルギー反応が認められています。風しんワクチンによる重篤な副作用の報告は今までのところありません。また、妊娠可能な女性が風しんワクチンを任意で行った場合、2ヶ月間の避妊が必要です。
以上のように,風疹ワクチンはお子さんの健康な成長のために必要な予防接種と考えられます.
接種後の家での対処法
発熱 一般的処置として、冷やしてあげましょう。38.5℃以上で機嫌が悪いときは手持ちの解熱剤を与えましょう。ワクチン以外の原因による発熱も考えられるので翌日診察を受けてください。
局所の発赤・腫脹 ぬれタオルで冷やしてあげましょう。腫れが強かったり、水ぶくれを作ったときは塗りぐすりを処方することもありますので、翌日受診してください。一般的には、特別な処置をしなくても自然に治ります。
ひきつけた時 自宅でひきつけた時は、横向きにして、衣類をゆるめて、ひけつけの状態をよく観察してください。大抵数分でおさまります。体温を測定して、病院に電話してください。
発疹・発赤 全身状態が悪くなければ何もしないで翌日診察を受けてください。かゆみが強くて眠れないとか、発熱を伴っている、極端に不機嫌であるなどの症状が伴っているときは医師に連絡してください。
異常に機嫌がわるくなった時、電話で様子をきかせてください。
その他、心配なことがあれば遠慮なく医師に連絡してご相談ください。
◆◆◆ 接種手順 ◆◆◆
@受付、体温測定、問診票の記入
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A予診:問診票を見ながら、医師が接種に際し何か問題がないか確認します。その後、聴診器で胸の音を聴いたり、のどに異常がないか診察します。
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B医師のサイン、保護者のサイン:予診と診察で問題なく接種可能と医師が判断したらサインします。そして保護者の方も接種に同意されたらサインしてください(お子さんを連れてきた方の名前でサイン)。
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C注射:上腕部にします。いやがって動く子もいますので、保護者の方はお子さんの体と反対がわの手をしっかり抱きかかえてください。注射をする方の手は医師と看護婦が持ちます。注射部位は接種後看護婦がかるく2〜3回もみますので、その後はもんだり、こすったりしないようにしてください。
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D経過観察:接種後30分間は院内か駐車場の車の中でお子さんの様子を観察します。長いと感じるかもしれませんが、急な副反応(ショックなど)はこの間に起こることがほどんどですので、必ず医師にすぐに連絡がとれるようにしていてください。
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E帰宅:接種当日は入浴は差し支えありません。激しい運動は避けましょう。注射部位はこすったり不潔にしないようにしてください。
◆女性が妊娠初期に風疹に罹ると、胎児の発生に影響し、かなりの頻度で先天性風疹症候群を発病します。たとえ風疹ワクチンを1歳すぎで接種してあっても、その後風疹ウイルスの曝露をうけないと(すなわち、風疹がまわりで長期間流行しないと)、幼児期に獲得した風疹に対する免疫が大人になったころには弱くなってしまうかもしれません。妊娠可能な年齢(高校生以上)になったら、女性は風疹の抗体価をチェックすることをお勧めします。
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