1968年に米国のノーウォークという町の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者のふん便からウイルスが検出され、ノーウォークウイルスと呼ばれました。
このウイルスがウイルスの中でも小さく、球形をしていたことから「小型球形ウイルス」の一種と考えられました。2種類のウイルスが同定され、そのひとつが
2002年8月、国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と命名されました。もうひとつは「サポウイルス」と呼ぶことになりました。
このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染ですが、空気感染もあるといわれています。次のような感染様式があると考えられています。
- 汚染されていた貝類を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
- 食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などが含まれます。)が感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場合
- 患者の便やはいたものから二次感染した場合また、家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ直接感染する場合
- 患者さんの下痢や嘔吐物の処理が不十分で、残った排泄物が乾燥して室内に拡散浮遊して空気感染を生じる場合
ノロウイルスは、冬季の「感染性胃腸炎」の原因となるウイルスですが、感染性胃腸炎の原因と考えられる主な病原体は、細菌、ウイルス、寄生虫なでですが、これらの
うちウイルスとして、ロタウイルス、腸管アデノウイルス、そしてノロウイルスがあげられます。
我が国における月別の発生状況をみると、一年を通して発生はみられますが11月くらいから発生件数は増加しはじめ、12月〜1月が発生のピークになる傾向があります。
潜伏期間(感染から発症までの時間)は24〜48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1〜2日続いた後、なおり後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため、通常、脱水症状がひどい場合に輸液を行うなどの対症療法が行われます。体力の弱い乳幼児、高齢者は水分と栄養の補給を充分に行い体力が消耗しないようにしましょう。
下痢止めは、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
【手当て】
吐き気、嘔吐が激しい時期は比較的短く、食欲はほとんどありませんので、絶食、絶飲 に近い状態でけっこうです。吐き気止めの座薬、漢方薬などで吐き気を抑える治療が主体になります。
4〜6時間経って嘔気がややおさまると水分を少しづつ与えられるようになります。治療用のソリタ顆粒(ちょっと味が悪いのが欠点です)や、最近初期の輸液に近い飲料が開発されたOS−1などを一回に3〜5ccづつ、2〜3分間隔から始め、嘔吐がなければ量を増やしていきます。牛乳をこの時期に与えるとウィルスの攻撃を受けて弱っている腸に負担がかかり、嘔吐・下痢が長引く恐れがありますので控えてください。母乳の蛋白質、脂肪は牛乳のそれよりも吸収されやすいため、与えてかまいません。
何度も嘔吐して、グッタリし、目が落ち凹んだり、手足が冷たい時には急激に脱水になっている場合が考えられます。点滴や入院加療が必要になることがあります。
嘔吐の時期を乗り切れば一安心です。
何度も下痢をすることによって、体の水分や電解質が失われますので水分の補給が必要です。市販のイオン飲料水は味はよいのですが塩分の濃度が低いため体液が薄まってしまいます。治療用には、前述のソリタ顆粒やOS−1が適しています。
うすい塩味の 野菜スープ を作ってあげてもよいでしょう。
お腹にかかる負担が最も少ないのは お粥、うどん、パンなどのでんぷん類
です。腸管が弱って消化吸収機能が障害された場合、母乳やミルクに含まれている乳糖を分解できなくなってしまい下痢が長引く場合があります(二次性乳糖不耐症)。その場合は、お薬で乳糖分解酵素というものを、母乳を与える前に飲んでもらったり、ミルクを作るときに混ぜてもらったりして、乳糖の消化を手助けする方法があります。あらかじめ乳糖を加水分解したミルクを勧める場合もあります。
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