インフルエンザと診断された方へ
インフルエンザウイルスに感染して1〜3日で発症します。伝染力が強く、家族や集団内で流行します。症状は、39℃くらいの高熱、全身のだるさ、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状が強く、咳、鼻水、のどの痛みを伴います。またおう吐、下痢などの胃腸症状が生じることもあります。経過と診察と周りの流行状況などで大抵診断は可能です。外来で迅速診断する検査法もあり、補助診断として治療法の選択に利用できるようになりました(必ずしも全員に検査が必要ではありません)。
≪治療と家庭での看護≫
治療と看護は 

1.ウイルス自体を狙った治療   

2.対症療法(症状をやわらげる)  

3.合併症の治療   

4.家庭での一般的看護・ケア  からなります。


1. インフルエンザウイルスの増殖を押さえる治療薬として、A型B型両方にきく抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル)などがあります。発病して48時間以内に使用すればある程度の効果が期待できますが、副作用も多く注意が必要です。インフルエンザ自体は自然に治る病気ですので、薬の副作用や耐性ウイルスの出現を考慮して、これらの薬剤を使用しないで経過をみる場合もあります。


(例)当院の現時点(2018年12月)でのタミフル処方指針:


1)発症後48時間経過した患者では使用しない(治療効果が期待できない) 
2)B型インフルエンザには効果が薄い(未使用群と差がない)ので原則使わない 
3)1歳未満は安全性が確立されていないので使わない  

4)基礎疾患がなくかつ元気そうな患者には使わない   

5) 10歳以上の方には原則として処方しない。

6)治療効果と副作用をかんがみて、治療法を選択する 
7)処方の際は、服薬開始後、患者さんの観察を充分にすること(特に服薬開始後しばらくは目を離さない)を約束していただく。このような治療方針で今シーズンは望む予定です。


2. 対症療法:咳、鼻水、下痢、おう吐などをやわらげるお薬を与えたり、高熱や痛みにたいして解熱鎮痛薬(熱さまし)を使用します。 注意:インフルエンザにはあまり強い解熱剤は使うべきではありません。アセトアミノフェン(商品名カロナールなど)というマイルドなものがよいでしょう。 ポンタール、ボルタレン、インダシン、アスピリンなどは使用しないように勧告がでています。


3. 合併症の治療:インフルエンザの合併症としては、気管支炎、肺炎、中耳炎などの細菌による二次感染をおこしやすく、その場合は抗生物質が処方されます。また、高熱にともなって熱性けいれんをおこすことがあります。ウイルスそのものによる肺炎、気管支炎、心筋炎などがあります。非常にまれではありますが重篤な合併症として、インフルエンザ脳炎・脳症やライ症候群があり、意識障害、けいれん、肝障害などをきたします。入院して集中治療が必要になります。注意!:脳炎・脳症の初発症状として意味不明の言動・興奮・幻視・意識がはっきりしない・けいれん等に注意しましょう。お子さんのなかには、睡眠時高熱に伴って意味不明なことをいったり、興奮したりしやすい子がいます。これは熱せん妄といい、インフルエンザ脳炎・脳症とは異なります。翌朝けろっとして意識がはっきりしていれば熱せん妄かもしれません。

4. 家庭での看護:@安静が第一です。A水分をしっかりとる。脱水にならないように。B室内の湿度を高くする。C寒がっている時は温めて、暑がっている時は熱をにがすようにすこし薄着にする(本人が楽なようにしてあげる)。D栄養補給。消化のよいものを与える、ビタミンCを補給する。


≪伝染病としての隔離の問題≫
 インフルエンザは隔離が必要な伝染病です。登校・登園には許可が必要です。通常、インフルエンザの出席停止期間は「解熱した後2日経過するまで」となっています。インフルエンザの経過中、3日ほどの高熱がでて半日〜1日解熱したあと再び発熱する(二峰性発熱)がよくみられます。平熱が2日(48時間)続いたら、「その次の日から」登校・登園が可能となります。
 ここで問題なのは、抗インフルエンザ薬がたまたま良く効いた場合、発病後3〜4日で許可がもらえることになってしまいます。しかし、抗インフルエンザ薬を飲み終えてから再び発熱することがあります。また、抗インフルエンザ薬の使用により、体内で耐性ウイルスが発生して、周りの人にその薬が効かないインフルエンザウイルスをうつすことになる、といった不都合を生じる場合もあります。病後は体調が戻るのに時間がかかりますので、本人のためにも、そして周りの人にうつして迷惑をかける可能性も考慮し、充分体調がもどるまでは登校・登園は控えるようにしてください。                                 

 

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