日本人はお風呂好きなのですが、同時にかぜをひくとお風呂を極端にさけることもあるようです。

以前から不思議に思っていたですが、「入浴」に関する質問がこどもの病気の話をする上でかならずついてきます。

「お風呂」が重要なキーワードになるのは何故でしょうか。

そのひとつの答えに、日本の多様な入浴形態があると思います。確かに田舎では湯冷めが気になる住宅環境もあるのでしょうし、ゆでだこになるような入浴の仕方もあるのでしょう。


外来でお話するとしたら、「入浴」の是非ではなく、「入浴の仕方」かなと思います。

 

結論からいいますと、私自身は発熱小児であっても、子供がそれで気持ち良いなら解熱して汗をかいた時に、さっとお風呂にいれることを勧めています。水痘のお子さんでも、泡立てた石鹸をやさしく塗って、シャワーで流すように教えます。

それでも「お風呂」を心配する祖父母などには、あまり自己主張はしません。

いつお風呂に入っていいかといったことは基本的にはお母さん方の判断に任せていますが、大体の目安を書いてみました。


●かぜ:

微熱(37.5℃以下)程度で食欲もあればお風呂に入れても良いでしょう。それ以上の体温でも、本人が元気ならば、入浴して皮膚を清潔にし、リフレッシュしてあげるとよいでしょう。

「お風呂に入ったのでかぜがぶり返した」、あるいは「お風呂に入ったから熱が出た」と心配する人がいますが、お風呂のせいでかぜが悪くなるということはないと言われています。

また、湯冷めを心配してお湯を熱めにすることがありますが、熱いお風呂は体力を消耗します。かえって少しぬるめのお風呂にしましょう。夏場はシャワー程度でよいでしょう。

熱が高く食欲・元気もない時には入浴は避けたほうがいいでしょう。

また、湯冷めしないようにとお風呂からあがったらすぐに布団の中にもぐりこませようとすることがありますが、子供は汗っかきですから体のほてりを十分に取ってから布団にいれるようにしましょう。

咳や鼻水がまだ多いという場合に長くお風呂にいれないことがあるようですが、入浴することで鼻の通りがよくなり気道が加湿され痰が出やすくなる場合もあります。元気や食欲があればお風呂は構いません。

●下痢・嘔吐:

下痢自体はひどくなければ入浴してもかまいませんが,何回も吐いたり、食欲がなくぐったりしている時にはお風呂は控えた方がいいでしょう。

また、乳幼児は下痢が続くとオムツカブレがひどくなりやすいですから、早めに入浴を再開するか、あるいはお尻だけでも洗ってあげるようにしましょう。


●喘息:

咳が少し出るくらいの発作の場合は入浴して構いません。喘鳴が外から聞こえたり、病院で吸入が必要になる程度の時はおさまるまで控えてください。


●アトピー性皮膚炎や湿疹の出やすい子:

湿疹の出やすい子は塗り薬も大事ですが、まずスキンケアを心がけてください。その第一は入浴・石鹸の使用により皮膚の清潔を保つことです。

かぜをひいてお風呂に入らないために湿疹がひどくなることがよくみられます。

かぜをひいて熱があっても、普通の子以上に積極的に入浴させてあげましょう。

ドイツやフランスの同僚は、一般に子供が風邪をひいたらお風呂に入れ、水分を充分取らせて寝かせる方法がとられている、といいます。また、欧米の育児書には「発熱時には体温より5度低いぬるま湯につけて冷やすのが効果的である」と書かれていますし、実際、そのように行なわれているようです。これまで、日本では、熱のある時は入浴しないというのが「常識」でありましたが、近年、さまざまな学会や厚生省の研究斑などで、科学的評価が行なわれつつあります。風邪に限って言えば、入浴が風邪の経過に悪影響を及ぼすというデーターは今のところありません。