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基本方針と生活アドバイス

1.体の洗い方

毎日おふろにはいりましょう。おふろはぬるめのお湯で、やさしく体をあらいましょう。弱い肌には、ナイロンタオルはもちろんのこと、タオルやガーゼの使用を控えてください。お母さんの柔らかい手のひらで洗いましょう。汗や汚れがたまりやすい間接部や皮膚の重なっている部分(首など)は石けんを使いましょう。乾燥が強い部分や皮膚の脂肪分が不足している部分には、石鹸をしないほうがよいことがあります。洗髪には石鹸ではなくシャンプーを使ってください。すすぎはシャワーを用いて充分に行ない、シャンプー・石鹸の成分が、髪の地肌・からだのしわしわの間・皮膚炎で荒れた肌などに残らないように注意してください。さっとぬるま湯につかって更にきれいにすすぐのも効果的です。

2.ぬり薬をきちんと塗りましょう。

 寒いときには湿度が下がり、肌から分泌される皮脂の量も減りますので、どうしても皮膚の表面がカサついてきます。カサカサした肌というのは、それだけでもかゆみが出やすいものです。このような時には皮膚の表面をいつもしっとりさせるようなスキンケアを心掛けてください。きめられた場所に、きめられた回数、指示された軟膏を、毎日欠かさず塗りましょう。一般にはお風呂あがり、一日の活動を開始する朝に塗って、やさしく肌を守ってあげましょう。小さなお子さんには、夜寝入ってからや、お昼寝の時にぬってあげるのも効果的です。

(注意)もらった軟膏は、種類、薬品名、使用目的などを充分に聞き、理解して使いましょう。数種類の軟膏を使用するときは、その使い分けに注意してください。ステロイド軟膏は、必要があって処方されているのでしっかり使いましょう。その使用方法を間違わなければすぐれた効果が期待できる薬剤です。ステロイド軟膏の一般的な使用原則としては、体のいろいろな部位の皮膚の状態にあわせて種々の強さのステロイド軟膏の中から適切な強さのもので開始し、それぞれの皮膚の状態が良くなったら、より弱いステロイド軟膏に変更するか、ステロイドが入っていない軟膏に変更していきます。

3.かかないこと、かゆみのコントロール

 ひっかいてしまうと、皮膚が破壊され、健康な皮膚のもつバリアーとしての働きが障害されてしまい、いろいろな刺激がひっかいた皮膚を通して入ってくるようになります。この悪循環を絶ち切るためには、かかないこと、かゆみをコントロールすることが大切です。

就寝中に無意識にかくことがあるので爪は短く切っておきましょう。爪を切った後、爪の先にやすりをかけて、触ってもチクチクしないようにしましょう。かゆみ止めのくすりを使用するのもひとつの方法です。先生に相談してください。直接肌に接する衣類・下着は、吸湿・通気性のよい木綿にし、毛・化繊・麻などの皮膚を刺激する素材を避けましょう。また洗濯するときは、洗剤は最小量とし、すすぎを充分行なってください。全自動洗濯機を使用する際は、1サイクル終了後、再度すすぎを行なってください。

 髪もできたら短めで、額・うなじ・肩に触れて刺激しないことが望まれます。暑いとかゆみが増強します。暑いお風呂は避け、ぬるめのお風呂にしてください.もともとお子さんは暑がりなものです.日中、薄着をお薦めします。夜寝るときも薄着で布団のかけ過ぎに注意してください。毛布を使うような場合には、チクチクした部分が直接肌に触れないようカバーをする必要があります.ホテルのシーツのような目のつまった、しっかりした木綿の布で毛布全体をカバーしてあげましょう。それでも夜無意識にひっかいて傷だらけにしてしまう場合は、そでや足首がめくれない、長袖・長ズボンのパジャマを使用してみてください。

4.バランスの良い食事を

 アクの強い野菜、香辛料などはできるだけさけ、栄養のバランスのよい食事をとりましょう。和食をお薦めします。忙しいお母さん方にとっては無理かもしれませんが、1日30品目を目標にいろいろなものを食べさせてあげてください。

5.食物アレルギーかな?と疑う前に...

 口の周りに湿疹が目立つ赤ちゃんは、単に食物・塩分でかぶれている場合がほとんどです。食事前にワセリンなどで口のまわりの皮膚を保護しましょう。食後も濡らしたガーゼで汚れをやさしく取ってあげましょう。

 食事の後、かゆみを訴える場合、食物アレルギーを疑う前に、食べ物の温度を考えてください。寒いときにポカポカ温まる食事や、お鍋を囲んでフーフーと吹きながら食事をしたとき、からだが温まり汗ばむようになると湿疹がかゆくなります。これは単に体が温まったせいであり、食物アレルギーとは関係ありません.頭や顔、胸などに湿疹があるのに、おむつで保護されている部分に全く湿疹がない子が結構います。その子は、食物アレルギーと考えるよりも「体脂が奪われた状態」から生じた「皮膚のバリアーの障害」と考えるのが妥当でしょう。本当に食物アレルギーかどうかは、勝手にきめつけないで、先生に相談し除去テスト、負荷テストなどを通じてしっかり診断してもらってください。

 

 

おまけ(湿疹●アレルギーの発症●アトピー性皮膚炎などに関する最近の話題

 

経皮感作用について

プロアクティブ療法について

 

1)「経皮感作」(いたんだ皮膚から入ってくる異物に対してアレルギーが発症という考え方)

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関連については以前から議論されてきております。患者さんからすれば、「卵や牛乳を食べたから皮膚が赤くなったり痒くなったりするのではないか?」と考えてしまうのは非常にシンプルな発想であり、実際小児科医の多くがそのように考えていた時代もありました。 さて、アトピー性皮膚炎の病態として皮膚のバリアー機能障害が重要視されるようになってきたわけですが、そのようないたんだ皮膚は様々な外からの刺激を受けやすい状態です。傷んだ皮膚から卵やピーナッツなどの食物抗原が侵入し、卵やピーナッツに対する特異的IgEが産生されてしまうという経路も考えられており、これが「経皮感作」です。「卵を食べてアトピー性皮膚炎になる」というよりも、「湿疹●皮膚炎があると、いたんだ皮膚を介して卵アレルギーになる危険性が高まる」ということです。 逆に、食物抗原を口から食べることは、アレルギーを弱めて治療(寛容)に向かわせる可能性があり「食べて治す治療」が試みられています。 これまで考えていた流れと全く逆かもしれないということですが非常にわかりやすい考え方であり、もしこの考えが事実なら「とにかく新生児期からのスキンケアが重要」ということになってきます。 湿疹●皮膚炎を予防・治療しないと、次から次へとアレルゲンの感作、アレルギーの発症が進展してしまう(アレルギーマーチ)危険性があるということです。

 

2)Proactive療法(プロアクティブ療法)について

 患者さんからすればステロイド軟膏やタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)は、皮膚が赤く、ブツブツしているような湿疹●皮膚炎のひどいときに「仕方なく」塗る薬なのだと思います。しかし、このような言うなれば「受動的な」「うけみの」治療法ではなかなか湿疹をがっちりと抑え、皮膚をよい状態に保つことは難しくなります。「ステロイド軟膏を塗ってよくなったので保湿剤に変えたらまた湿疹がでてきた」ということです。そこで注目されている方法が"Proactive 療法"です。(テレビで宣伝しているニキビ治療とは違います!(笑))

 赤みやかゆみがないと調子がよいと思いがちですが、一見発疹が消失してもまだ病気は治ってないと考えて、皮膚の見た目がきれいになった段階ですぐにステロイドやタクロリムスを中止しない方法です。

 具体的に:適切にステロイド軟膏を使って、皮膚が一見して何もないと思われる状態にもっていってから、すぐに保湿剤の単独使用に切り替えないで、週に1〜2回ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏を塗り続けるやり方(他の日は保湿剤をしっかり使用する)をさします。この方法を用いることによって、炎症の根本が改善され、皮膚はつるつるスベスベの状態が維持されるようになるのです。

「Proactive療法」を支持するデータ:

 週1回プロトピック軟膏をぬる「Proactive療法」を続けているとアトピー性皮膚炎の再発が少なくなります。さらに続けていくと血液中の「IgE」の値が低下していきます。血液中のアレルギーを示す卵と牛乳などの特異的「IgE」値も下がっていきます。従来の保湿剤に切り替える方法にくらべて、「Proactive療法」を行ったお子さんの身長の伸びが(相対的にステロイド軟膏の使用量が多いのにも関わらず)よくなります。アトピー性皮膚炎では、「Proactive療法」に引き続き、発疹が消失して見かけ上きれいな皮膚になっても保湿剤のぬり薬を使い続けることでよい状態が保たれます。保湿剤は、アトピー性皮膚炎の発疹がひどかったところに重点的にぬると良いことがわかっています。