外来で、「平熱(普段の健康なときの体温)は?」と質問すると、「35℃台です」という返事がよく返ってきます。実際に平熱が35℃台の方はいますが、そんなに多いはずありません。

その多くの方が、正しく体の中心部の温度(中心体温)を測定していないのではないかと危惧されます。

正しい体温の測り方をまとめました。

★どこで測るか? 

体の中心部の温度(中心体温)を測定するのが理想ですが、実際は難しく、そこで一般には、わき、口腔内、肛門(おしり)、耳(鼓膜)などで測られています。

日本では習慣として「わき」で測ることがよく行われています。わきで体温を測定するのが主流となっている国は世界中で数ヵ国しかなく、欧米では口腔内、あるいは直腸で測定されています。


★体温計の種類  

水銀体温計:一番正確ですが、5〜10分以上しっかりと、以下に述べるような方法で、はさんでおく必要があります。


電子体温計:実測式と予測式の2種類があります。1分半で測れる予測式電子体温計はとても便利ですが、測り始めてから90秒間の体温上昇カーブから10分後の値(平衡温)を予測して表示するものなので、以下に述べるような方法でしっかり挿入して固定しておかないと、水銀体温計より高めにでたり(微熱さわぎ)、低めにでたり(低体温さわぎ)、また測る度に値が異なったり、毎回エラーが表示される(体温計の故障ではありません!)などの事態が生じます。


耳式体温計:鼓膜から発せられる赤外線を検知することにより鼓膜温を測定する体温計です。1秒程で検温できて便利ですが、小児での使用には現時点では問題があります。日頃、小さい子供達の耳の中をしょっちゅうのぞいている小児科医からみると、乳幼児の細く、曲がって個人差の多い外耳道や耳垢の多い外耳道に対して、現行の耳式体温計が、はたしてどれだけ正確にその奥の鼓膜からの赤外線を捕えられるか、はなはだ疑問に感じていました。かなりの乳幼児で実際の体温より低く測定されるのではと心配していましたが、昨今それを裏付けるデータが出てきています。日々耳式体温計は、改良が重ねられ上述の欠点をカバーする(?)機種がでてきていますが、個人で使用するのでしたらまだしも、外来待合室などで不特定多数の患者さんに使用するのには適さないと考えています。


★わきで測るときの注意点(重要!)


中心体温に近い脇の下の動脈(脇窩動脈)のそばの体温を測定すべきです。

そのためには、

1.脇の下の中央のくぼみの奥に体温計の先端を深く挿入し、

2.かつ、音が鳴るまでその位置を動かさないように固定する、

この2点が重要です。

体温計を脇にはさんだだけでは不十分で、体温計の先端を脇の中央の奥に押し上げるようにして、その位置をキープすることがポイントです。


★いつ何度ぐらいあったかは、重要な情報です。

忘れないでメモして、次回受診時におしえてください。体温の変化をグラフにすると大変わかりやすいと思います。受け付けに常備してあります「熱型表」をご利用ください。

平熱がどのくらいか知っておきましょう。元気なときに、1日4回(朝、昼、夕方、寝る前)食事前の安静な状態で体温を測ってみてください。

体温は1日中同じ温度ではありません。朝は低めで、夕方は高くなります。食事や運動で体温は高くなります。

赤ちゃんは厚着や暖房などの影響で高く測れてしまうことがあります。


体温計・体温測定のこつをよく理解して正確な体温を測定しましょう。