毎日小さい子の診察をしていますと、泣く子、泣かない子、さまざまなお子さんとお会いします。「正確な診断をつける」という意味では、いかに泣かせないで診察できるかで決まってしまうところが大きいのです。泣いてしまうと診察の情報量は極端に落ちてしまいます。色々と泣かないような工夫はしているつもりですが、ここでお母さん方に協力してもらうことで泣かずにすむことが多くなるかもしれません。

まだお話ししてもあまりわからない年齢の場合でも、痛くないんだよこわくないんだよという事をあらかじめ繰り返してお話しして安心させるようにして下さい。お母さんも緊張しないでリラックスして診察室に入ってきて下さい。お母さんの緊張をこどもは敏感に感じ取ります。聴診中もやさしく声がけしても結構です。ただし、診察中に手で体をトントンすると良く聴こえないのでこれはやめてください。
背中を聴診するために抱っこして向きを変えたりするのも、わからないとコワイみたいですから、お母さんが手ばやくきっちり180°向きを変えて抱っこしてあげるようにしてみて下さい。お母さんに抱きついている場合は、始めに背中から聴診しても結構です。
口を見るときに暴れて上手く行かないときには2人で固定しますので、お母さんはお子さんの両手を(手首を持って)しっかりと下に固定して下さい。その瞬間だけきっちり押さえて良く見えるように協力してもらえれば,結局本人も嫌な思いをするのが短い時間ですむものです。職員もあれこれ気をちらしたり、気を引いたり、あやしたりしてくれます。

医者と視線が合うと泣いてしまいそうな場合、目が合わないように診察することがあります。別にそっぽを向いて診察しているわけではありませんので誤解のないように。

どうしても大泣きしちゃった場合でも、診察が終わってカルテを書きながらお話ししているとき、立ち上がって抱っこしてあやしても構いませんから、少し泣き止ませるようにして下さい。大泣きしたまま座ってそのまま話をしようとしても、何も聞こえないし話せません。


○ある程度お話しすればわかる子の場合


特に前回に予防接種をしたような場合は、今度は違うということをあらかじめお話ししておくようにして下さい。予防接種も、かならずしも痛いものではありません。針は細く鋭いものを使用してますので刺す瞬間の痛みはほとんどないようにしています。痛がるのはワクチン液による刺激がほとんどです。特に三種混合ワクチンはしみますので幼児で三種混合ワクチンの時に泣いてしまうのはいたしかたないかと思います。ちなみに3〜4才児の日本脳炎ワクチンは痛がる子はほとんどいません。    

○3−4歳を過ぎて口を開けるのを極端に嫌がる場合


基本的に医者にかかるとこわいことをされるという先入観が固まってしまっていることが多く、それを取り除いて「信じてもらう」には一苦労します。何度か通ってこわいところではないことを身を持って体験してもらうのが一番です。その場合,家に帰ってから機嫌のいいときにこわくなかったことを再確認して、次も泣かないようにお約束してみましょう。最初のうちはちょっとしたご褒美も良いかもしれません。のどを診察のとき、これくらいの年齢に達すれば、上手くやれば舌を押さえないでものどを見ることができるようになってきます。「舌圧子を使わない、嫌がることはしない」と本人に約束することができますので、あらかじめ、お家で鏡を見ながら(できればのどの奥をライトで照らしながら)「アー」と声を出してどうすればのどがちゃんとみえるのか練習してみて下さい。


○ふだんからこんな心がけをお願いします:

子どもに対して否定的でいやな発想を植えつけるような表現はしないようにしてください。病院は「病気のときに痛い思いをするところ」ではなく「病気のときにみてもらったり病気にならないようにしてくれるところ」というように、同じことであっても明るく楽しい面から話してあげて下さい。「待合室におもちゃがいっぱいあって遊べるところ」でも構いません。
「いうことをきかないと、先生に注射をしてもらうぞ」というのもやめてもらいたいものです。