米国の抗生剤の小児への使用についてのパンフレットを入手しました。大切なことが分かりやすく説明されていますので日本語訳を作りました。 

以下、その全文です。

タイトル:あなたのお子さんと抗生剤:不必要な抗生剤は、有害です

Unnecessary Antibiotics CAN Be Harmful

アメリカ小児科学会・CDC・アメリカ微生物学会

もしあなたの子どもが病気をしたら
抗生剤はその答えとは限りません。

抗生剤について:抗生剤は、ご承知の通り最も強力で重要な薬剤に属します。適切に使用されれば、それらは命を救ってくれますが、不適切に用いると、実はあなたのお子さんを傷つけることになります。抗生剤は、ウイルス感染に使用すべきではありません。

細菌とウイルス:病原微生物の2つの主たるタイプ―細菌とウイルス―が、ほとんどの感染症の原因です。事実、ウイルスはほとんどの咳や咽頭痛、そしてすべての感冒の原因です。細菌感染は抗生剤で治すことが出来ますが、通常のウイルス感染は、決してそうではありません。あなたのお子さんは、病気自身がもつ経過を経て、こういった通常のウイルス感染から回復します。

 細菌感染は抗生剤で治すことができますが、
ウイルス感染は、決して抗生剤で治すことはできません。

耐性菌:細菌の新しい株は、抗生剤耐性となっていきます。これらの細菌は、その前に効いた抗生剤で殺すことができなくなっています。こういった耐性菌のあるものは、入院で静脈注射を必要とするような、さらに強力な抗生剤で治療しなければなりません。そして、いくつかはすでに治療ができなくなっているのです。どんどん抗生剤を処方するということで、あなたのお子さんが耐性菌に感染する機会をどんどん増やすことになります。

もし、耐性菌に感染したら、あなたのお子さんは
入院での治療を必要とするかもしれません。

どうやって細菌は耐性化するのか:私達が抗生剤を用いる場合はいつも、感受性菌が殺されます。しかし、耐性菌は残され、成長し、増殖します。抗生剤の繰り返しの使用や、不適切な使用は、耐性菌を増やす主な原因となっています。これらの耐性菌は、家族や地域で他の人達にもまた、拡がっていくことになるのです。
(補足:かぜで不必要な抗生剤を使うと、常在菌(常に体に存在して無害な菌)の中の感受性菌が無くなり、耐性菌が残ります。これを繰り返してゆくと耐性菌が増えて時にその耐性菌が病気の原因になります)

あなたはあなたの子どもさんを
耐性菌から守ることが出来ます。
                                
両親への処方箋:細菌感染とウイルス感染の違いについて学んで下さい。そして、あなたの子どもさんの主治医とそのことについて話し合って下さい、抗生剤をウイルス感染にもちいるべきでないことを理解して下さい。
「抗生剤が必要な場合、そして必要でない場合とは?」
この分かりにくい質問に対して、あなたの主治医から最善の答えがあります。そして、その答えは、きちんとした診断に基づいています。ここに、幾つかの例をお示ししましょう。

耳の感染症:いくつかのタイプがあります;多くは抗生剤を必要としますが、あるものには必要ありません。

副鼻腔感染症(蓄膿症):濃厚で緑色の鼻汁のほどんどの児は、副鼻腔炎ではありません。抗生剤は、遷延化したり重症化した一部の例に対して必要となります。

咳と気管支炎:小児では気管支炎に抗生剤を必要とすることはめったにありません。

咽頭痛:ほとんどの例がウイルスによります。唯一の重要な問題「溶連菌咽頭炎」が抗生剤を必要とします。検査によって診断がなされます。

感冒:感冒はウイルスによっておこり、時々は2週間かそれ以上続くことがあります。抗生剤は、感冒には効果がありませんが、あなたの主治医は病気の経過を通して、快適に過ごせるように、助言してくれるはずです。

感染は変化することもあります
ウイルス感染は時々細菌感染を併発します。しかし、細菌感染を予防するために抗生剤でウイルス感染を治療しても役立ちません。そして、耐性菌感染を呼び起こすことにつながります。もし、病気が悪くなったり長引いているならば、適切な治療がなされるために、あなたの主治医に説明をしてもらってください。

よくある質問について

◆抗生剤耐性菌からどうすればわが子を守ることができるでしょうか?
あなたの主治医が抗生剤が有効と判断した場合のみ、抗生剤を使用して下さい。
抗生剤は、ほとんどの感冒・咳嗽疾患・咽頭痛・あるいは鼻炎を治すことはありません―「子どもさんは自分自身で感冒を克服する」―のです。
◆鼻汁の色が透明から黄色や緑色にかわったら、わが子は抗生剤を必要とするようになったのでしょうか?
黄色や緑色の鼻汁は、あなたの子どもさんが細菌感染に罹ったことを意味しません。ウイルス感染の経過で鼻汁が濃厚で色が変化するのは通常の経過です。
◆このことは決してわが子に抗生剤を与えてはいけないということなのでしょうか?
抗生剤は大変強力な薬で、細菌感染に対して使用すべきものです。もし、抗生剤が処方されたならば、経過中処方をきちんと終えるようにして、決して後に使おうと取っておくようなことはしてはいけません。
◆どうしたら、わが子がウイルス感染か細菌感染か知ることが出来るのでしょうか?
あなたの主治医におたずねください。もし、あなたがわが子に治療が必要と思われるならば、あなたの主治医に連絡をとってください。
でも忘れないで下さい。「感冒はウイルスが原因です。そして抗生剤で治療すべきではありません。」

以上